1998年10月に、イギリスのナイトクラブによるバイアグラの乱用事件が報告されています。
この報告は、バイアグラが性的暴行に使用されたとして注目されました。 こういったケースでは、一般的には、多くはその他の”ドラッグ”と併用されています。
また、男性同性愛者によるバイアグラの乱用は、性感染症の拡大を促したとされ、注目を集めました。 ED治療薬の処方数が増加し、また、インターネットなどで購入され、爆発的にその使用服用が増加するとともに、乱用されるケースが増加することは不思議ではありません。
2004年、米国FDAは、ファイザー社に対して、バイアグラの注意書きに、性感染症(STD)やHIV感染のリスクが上昇する事、 バイアグラの使用数とこれらリスクが関連する事を、追加記載するように勧告しています。

ED治療薬の一般的な広告は、男性高齢者をターゲットにされていますが、10代男性をも引き付けてしまいます。
しばしば、10代の男性など若年者が、ED治療薬の処方を希望されて、来院される率が増加していることが話題に上ります。 マスメディアなどで、若年男性がバイアグラを乱用しているケースも報告されたりします。
2006年、スペイン、マドリードで、ファイザー社が、希望する18歳以上の若者全てに、バイアグラを箱で販売していたことも、話題になりました。
皆さんもご存じかも知れませんが、インターネット上で、”バイアグラ”を含む関連ワードで検索すると、無数の通販サイトが表示されます。 その数は、極めて多いもので、違法サイトも数多く上ります。
多くの方は、ED治療薬の乱用というと、遊びでの要素を連想します。 長時間わたり勃起が持続する事が良いことだ、とにかく強いに越したことがないという、間違った認識が根底にある場合もございます。 セックス性行為は、男性が一方的に女性を求めるのではなく、あくまで、パートナーとともに行う共同作業であるという認識が希薄な場合があります。

多くの医師は、ED治療薬が乱用され、その他の”ドラッグ”と併用される可能性があることを、あまり認識しておりません。 勃起薬が乱用される可能性があること、間違った服用をされる危険性があります。 患者は、直接要求されなければ、ED治療薬の使用法、”ドラッグ”との併用について、話そうとはしないため、認識できない可能性もあります。 ここでは、特にインターネットによる通信販売に注目し、現状を解説いたしております。

MedWatchでは、2000年から44件の注意喚起がされています。
その多くは、ハーブに関するもので、実際の医薬品が含有されていたとするものです。
2007年にMedWatchが注意喚起を促したのが最後になりますが、これは、バイアグラ、レビトラ、シアリスを使用した例で、因果関係は定かではありませんが、 突発性難聴の報告があったとするものです。
その他の注意喚起は、ほとんどが、先に述べたハーブや一般薬局で入手可能な医薬品に、 実際のバイアグラ(シルデナフィル)などの薬品成分または類似成分が含まれていたとするものです。
FDAに寄せられた市販後のバイアグラ、レビトラ、シアリスの副作用報告のごく一部に、これらED治療薬の乱用に関するものがあります。

バイアグラの乱用に関する報告は、市販間もない1999年に始まります。
イギリスのナイトクラブで遊行する3%に、遊びでのバイアグラ使用が認められました。 そして、その多くは脱法ドラッグを使用していました。
この報告によると、バイアグラの入手は、友人や売人、セックスショップ、インターネットからとしています。
1999年と2003年と比較すると、バイアグラの使用率は70%も増加し、初めて薬に手を出した年齢も27歳から25歳へと、低年齢化しています。 1999年の時点で、男性の3.2%、女性の1.1%がバイアグラの服用を試みたとしていますが、2003年には、これが17%と12.8%に増加しています。
しかも適応の無い女性のバイアグラ服用が4割を占めています。

男性同性愛者では、ED治療薬の使用経験は、一般男性が13.5%であるのに対し、37.5%に上るとしています。
男性同性愛者に注目した報告は、2000年のイギリスと2001年のサンフランシスコが初めてだと思われます。 サンフランシスコからの報告によれば、バイアグラの使用率は、年齢が上昇するとともに増加し、また、HIVの陽性率や、脱法ドラッグの使用、 不特定多数とのアナルセックスに相関し、増加していると報告しています。
最終的には、36%の男性同性愛者がバイアグラの服用歴を有し、そのうち32%が、スピード、MDMA、ケタミン、GHBと呼ばれる脱法違法ドラッグを使用していました。
硝酸アミルとバイアグラの併用例も18%に認められます。この併用は、致命的になりうるものです。
バイアグラの服用歴を有する者の半数は、医療機関で処方を受けておらず、最も多い入手先は、友人(44%)で、インターネット通販も6%に上ります。

ニューヨークのナイトクラブで薬を使用するゲイや両性愛者を対象にした報告もございます。
様々な薬物の使用率が高率であり、バイアグラとメタンフェタミンの併用率は36%、エクスタシーと呼ばれる薬剤は25%、コカイン19%、ケタミン26%。GHB22%としています。 セックスパーティーや乱交パーティーでの併用率は、特に高率としています。

男性同性愛者に対し、危険を伴う性行為についても聞き取り調査も行われています。
2000年から2001年に行われた、血清学的にHIV陽性者の男性に対して行われた、HIV感染予防介入試験の一環として、男性同性愛者の危険を伴う性行動について調査報告がなされています。 この報告では、対象者の12.3%がバイアグラの服用歴があり、そのうち39%が、3カ月内の硝酸アミルとの併用経験があります。(先にも述べましたが、危険な組み合わせです) 22%は、HIV治療薬であるリトナビルを服用していました。
バイアグラを服用している者の多くは、違法脱法ドラッグを併用したことがあり、バイアグラを服用していない者に比較し、パートナーが不特定多数であることが多いとしています。 HIV陽性男性にとって、バイアグラを服用し、なんら感染対策を行わないアナルセックス、オーラルセックスをすることは、より一般的なことのようです。
その他の、若い男性同性愛者を対象にした規模の小さな報告では、バイアグラの服用歴は、感染予防対策を講じていない性行為セックス、HIV陽性者と陰性者間の性行為セックス、 素性の知れない者との性行為セックスに、強い相関が認められるとしています。
バイアグラとメタンフェタミンの併用は、性感染症、HIV陽性者と陰性者間のアナルセックスに相関があるとしています。
これらハイリスクな性行動は、バイアグラ単独やメタンフェタミン単独使用では、有意に少ないとしています。

コロラドのデンバーで行われたゲイの集会でのアンケートでは、回答者の26%はED治療薬を試したことがあり、10%は最近3カ月の間にED治療薬の服薬歴が認められています。
ここでは、予想に反し、その半数は医療機関から処方を受けており、危険な性行動も、医療機関外からED治療薬を入手した群と比較し、少ないものでした。

男性同性愛者を対象にした報告が多いのですが、一般人口を対象にした報告もございます。
シアトルからの報告では、18歳から39歳までの男性を対象としており、そのうちの7.5%にバイアグラの服用歴があり、8.2%がバイアグラとエクスタシーを併用しておりました。
バイアグラを使用してる者を対象に、マリファナの使用歴と薬剤の入手経路を調べた報告があります。 その60%は、勃起不全を認めるわけでもなくED治療薬を使用しております。
薬物、特にマリファナの使用は、勃起不全のためにバイアグラを服用している者と比較し、3倍の使用率としています。
若い未婚男性は、バイアグラとマリファナともに、遊び目的で使用する傾向が強く見受けられます。
勃起不全ではない者の多くは、バイアグラをインターネット経由や、友人や、道端の売人から譲り受けたり、処方箋なしで購入できる薬局などで入手しています。 このようなケースは、友人などに転売する事も多いいとしています。
復員軍人委員会医療センターでは、薬物中毒で治療中の、ED治療薬を服用する男性の59%は、 ED治療薬を勃起不全治療に使用するのではなく、刺激を求めて服用しているとしています。

何らかの薬物乱用歴のある者は、早い年齢から薬物を使用している傾向があるとされています。
ED治療薬の乱用については、その他の違法脱法ドラッグとの併用により服用されることがほとんどであり、 多くは、エクスタシーと呼ばれる薬剤やメタンフェタミン、アルコール、マリファナです。
これら薬剤は性欲を増加させますが、逆に十分な勃起が得られなくなることがあります。
ED治療薬は、これら薬物の副作用としての勃起不全を克服するためと、射精後の不応時間を短くするために服用されます。
バイアグラとメタンフェタミンとの併用している者は、防御策を行わないセックス性行為を行っている傾向が強いとされ、HIV感染のリスクも高くなるとしています。 (ただし、バイアグラを単独で使用するものでも、危険な性行為セックスを行う傾向があるとしています。)
性行為セックスを行うパートナーの人数は、男性同性愛者とED治療薬を使用する男性に多き傾向があるとしています。
このことから、米国FDAに対し、ED治療薬の医薬品分類を変更し、できるだけ管理しうる範疇内に留め、市販形態を変更すべきだ、との要求も生じています。
多国にまたがる報告でも同様で、バイアグラの服用は、危険を伴う性行為、性感染症に対し無防備なセックスに繋がる傾向にあるとしていますが、 その多くは、他の薬剤の乱用者でもあります。

今まで述べたED治療薬を使用している若い方の多くは、医療機関にてED治療薬を処方され入手していません。
最近のアルゼンチンからの報告では、若い方のおよそ2割は、ED治療薬を使用した経験があり、7割以上の方が複数回服用したとしています。 これらの3/4は、友人から譲ってもらったとし、3%はインターネット通販により購入したとしています。 そして半数は、アルコールやその他の薬と併用していたとの事です。
医学生を対象にした報告では、およそ1割の学生が、ED治療薬を使用しており、やはり複数回使用していたとしています。
興味深いことは、ED治療薬の服用は、コンドームの利用に繋がるとした学生が7割いたということです。
服用目的は、勃起不全治療ではなく、好奇心(43%)、精力増強(35%)、不応時間の短縮(14%)としてます。 ”好奇心”は、医学生だけではなく、10台男性の場合、理由の一つに挙げられるとの報告もあります。
3%の高校生がED治療薬を服用した経験があるとし、35%は、16歳の時に初めてED治療薬を服用しています。 服用理由は好奇心からが多く、仲間や先輩の勧と続きます
入手経路は、半数以上が友人からであり、また、面白いことに、彼女からが3割近くに上ります。
友人への薬物の譲渡は3割程度に上り、その6割は、家族から盗んだ物だったそうです。
バイアグラを、どのようにして初めて知ったかとの質問では、約半数がテレビの広告とスポーツイベントの広告としています。

多くの男性は、医療機関等の受診を避けたいと考えるかもしれません。
インターネット検索で、無数のインターネット通信販売サイトを見つけることが可能です。その規模は、2010年で750億ドルとしています。
しかし、たった4%のインターネット薬局しか、正規の認可を受けていないそうです (National Asosociation of Board of Pharmacy(NABP)により、インターネット通販が認可されるシステムがございます)。

多くの研究で、ED治療薬のインターネット通販からの購入数や影響などが評価されています。
ドイツ、イギリス、イタリアの報告では、正規機関を介さずED治療薬を入手したものは、その使用頻度が少なく、勃起不全の程度も軽く、若年者である傾向があったとしています。 また、内科医に相談しづらい、インターネットで購入した方が安価で済むと信じている傾向があるとしています。 勃起不全は、社会的にややネガティブな内容であるため、男性がこの事を話題に上げるのを、避ける傾向があります。 そのため、人と接せず購入ができる、インターネットが抜け道となります。

インターネット通販から購入したED治療薬の安全性に関する報告も多数ございます。
2000年ころより、バイアグラのインターネット通販の倫理上、法律上の問題に関心が寄せられていました。
インターネット通販では、オンラインで寄せられた簡単な服薬歴を内科医が判断し、処方を行うものです。 電話相談できるサイトは10%以下です。

テストケースとして、オーガズム障害の女性が、インターネット通販を通して、バイアグラを購入しようとした報告があります。
その女性は、肥満症で高血圧と冠動脈疾患を患っているとしました。
22の通販サイトのうち2例は、通常に医療機関で処方されるのと同様に、処方箋の提出が求められました。9例は、何も必要とせず購入可能でした。 11例は、簡単なオンラインによる問診の後、購入となっています。
このうち3例は、適応がないにもかかわらず、この女性に対しバイアグラを販売しようとしています。 しかし、クレジットカードの支払いは済ませましたが、実際に品物は送ってこなかったのが2例あったそうです。

最近では、偽物やジェネリックと称した偽造バイアグラ、レビトラ、シアリスや、これらの類似化合物が、様々な精力増強をうたうサプリメント、 健康補助食品に含有されている場合があることが分かってきています。
2007年、アメリカFDAは、このような商品があることを、実際の商品名をあげて、注意を促しております。これ以降、毎年、発表されています。
ただ、これにも抜け道があり、FDAはサンプルのチェックを一回しか行いません。つまり、それに引っかからなければ、見つけることができません。

ED治療薬が乱用、誤用される危険性があることは、医師、薬剤師ともに認識されています。
ED治療薬は、重篤な副作用が生じる事があり、併用薬によっては時に致命的です。
このため、これを防ぐ方策が考えられておりますが、限界があります。
2008年、Ryan Haight Online Pharmacy Consumer Protection Actという、インターネットサイトからの、簡単な問診のみによる処方箋医薬品の購入を止めようという、運動がありました。 これは最終的には、Controlled Substance Actに繋がり、法律に制定されました。
一部の医師やインターネット薬局は、これにより起訴されています。
しかし、多くの方は、いまだ、インターネットによる通販が、違法である可能性があることを理解しておりません。 NABPは、これらオンライン薬局が適正であるかの指標を発表し、FDAはインターネット通販による購入に関する警告を発表しておりますが、 これに関する関心は低く、知らないことも多くあります。

内科医や硝酸薬を処方する医師は、精力増強をうたうサプリメントの中に、ED治療薬やその類似物質が含有されている可能性を考慮しなければなりません。
これらを服用したものは、精力の増強や勃起不全の改善が、含有されたこれら成分のためとは思いません。
FDAはインターネットを利用した調査で、1/3の精力剤で、何らかの医薬品が検出されたとしています。
多剤の乱用や、危険な性行為についての教育も必要とされます。